西水美恵子さんの講演から考える、本物のリーダーシップ。 June 2, 2013
Posted by marr0528 in leadership.trackback
私にとっての「英雄」だったスティーブ・ジョブズの亡きあと、私の中で非常に関心が高まっている「今を生きる」人がいます。元世界銀行副総裁の西水美恵子さんです。
今日は東京大学で、「いい会社をふやしましょう」というシンプルだけど奥の深そうな名前のNPO法人が主催するシンポジウムに参加してきました。理由は、その西水美恵子さんがひさしぶりに帰国して基調講演をされるからです。
ご自身の世界銀行での組織変革の事例を、西水さんが「私のメンター」だと仰るブータン雷龍王4世の言葉を交えながら、ゆっくりと静かに私たちに語りかける基調講演は、とても感動的でした。
「いつの世も、不幸な民が国家を不安定にする。だからブータンの目指すのは国民総幸福なのだ。」「そのための手段のひとつが経済発展。そして幸せへの鍵は、物質と情緒のバランスだ。」「目的と手段を混同してはいけない。」
世界史が教えてくれるのは、”世のため人のため”は民間から生まれるということ。様々な日本企業の経営理念は、ブータンの目指すところを同じではないか。企業が価値を発揮することが、国家の安定に繋がるのだ。
こんなメッセージを下支えするお話の中に、「本物のリーダーシップ」につながる内容が詰まっています。西水さんの著書に書かれているエピソードも多かったのですが、基調講演後のパネルディスカッション(めちゃくちゃ面白かった)での内容も含めて、特に印象に残っている部分をメモ書きレベルですが共有します。
- 国境を中国とインドに囲まれ「虎と象の間の蚊」と自分を表現するブータンのどうしようもない危機感(切迫感)。この現実を真正面から受け止めて、その危機感に対してどんな小さなことでも見逃さなかったのが、雷龍王4世。
- 17歳で即位をした後、九州ほどの広さの国土(しかし平坦ではなく高低差が激しい)を「一人でも多くの国民の心をききたい」と言って自分の足で歩いてまわり、国民は例外なく胸を開いて話を聞いた。本気でぶれないリーダーの言動が、国民の信頼感につながる。
- 西水さんは、この貧しき農民の声を聞く雷龍王4世の行幸をヒントに、官僚体質はびこる世界銀行で新たな研修プログラムVIP (Village Immersion Program)を作った。貧困解消を目的とする世界銀行のメンバーが、お客様である草の根の貧しき人々の村で生活をして理解するためのプログラム。部下には、露骨に嫌がる人もいた(そんな人には、辞めてもらって結構、と言った)。
- プログラムに参加したメンバーは、西水さんの考えを分かってくれた。「”This is not a life. This is just keeping body alive”だ。」貧しい人々の暮らしは、毎日毎日同じことの繰り返し。自分が動かなければ死神が動く。自分のための時間は全くない。
- VIPに参加したメンバーは自発的に、自分の体験を周囲に飛び火させた。この体験を共有しないと、自分たちのビジョンは共有できない。本物に触れることの大切さ。
- 組織変革を進める中で、職員だけでなく家族の幸せも必ず考えるようになった。出張中の子供のことで悩む女性職員に西水さんは「じゃあ、子供と一緒に出張してみたら。経費は副総裁の予算から出します。」と答える。忘れた頃に提出された「出張先で働くお母さん姿を見て、誇らしく感じた」という”小学生の出張報告書”を読み、これによって職員が子供の悩みから解放されたことを知って、「職員が本当に望むものに組織のビジョンが繋がっているのか」と考えるようになった。組織に関わる全ての人、そしてその家族の幸せが大切なのだ。
- ブータンの話、当たり前のことを言ってるだけなのに、みんな喜んでくれる。とても不思議。
- 本当のリーダーシップは、自分が組織からいなくなっても大丈夫な状態を作ること。
今日は「頭とハートを繋げる」という言葉が、特に心に残りました。そして、いったい自分は「いつ繋がったんだろう」と考えました。いや、今の私は、周りの人から見れば「かなり繋がっている」ように見えるはずなのですが、実は自分の中では「どうも少しずれている。しっくり繋がっていない。」ということに気づいてしまった気がします。
ジョブズは「毎朝鏡を見て、自分に問いかけるんだ。今やってることが、自分が本当にやりたいことなのか。」と言いました。西水さんは「自分でやりたいことを、本気でやろうとしているのか。自分に向き合いなさい。鏡に向かって、自分の目の奥を真っ直ぐに見るんだ。」と言います。
西水さんはなんだか凄い人過ぎて、手の届かなそうな遠い世界の人に感じるのですが(でも、Facebookで気軽に関西弁でコメントしてくださったりするのですが!)、シンポジウムのパネリストだった鎌倉投信の新井さん、テラ・ルネッサンスの鬼丸さん、HASUNAの白木さんが、私と同世代で活躍されているのに接してみて、「じゃあ、私はいったいどうするの?」と問い直す必要性を感じた、というのが今日の私の結論です。
とりあえず、(これまでの記事とまったく毛色が異なるのですが)ブログに書くことから始めてみました。あとは、毎日鏡に向き合うことにします。
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