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ある先輩の死と吉本ばななの「TSUGUMI」 April 7, 2010

Posted by marr0528 in book, diary, music.
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桜が満開だった先週末の土曜日は、高校生の頃に憧れていたある先輩の訃報で目が覚め、そのまま思考停止に陥ってしまいました。そんな理由で、本来であれば、ちょうど見ごろのお花見か、米国で発売日を迎えるiPadの話題かで盛り上がるべきところでしたが、あまりにも突然で早過ぎるこの死別に、僕の気持ちは過去へ過去へと遡っていってしまって、その日のうちに冷たい通夜の会場へ向かうことになったのです。

自分が過去に向けてギアを入れるのは、そのための仕組みがちゃんと用意されているので意外と簡単。iTunesからiPhoneに邦楽のプレイリストを放り込んで、それにどっぷり浸るのです。そこら辺の音楽の聴き方は、以前ここで書いた通り。

それから今回はもうひとつ、この先輩に関しては、どうしてもある本を読まずにはいられませんでした。それが、吉本ばななの「TSUGUMI」。私こと白河まりあが、病弱の美少女つぐみと過ごす田舎最後の夏休み、という絵に描いたような設定のお話。でも、けっしてありきたりではないのが、このつぐみが恐ろしいほど横暴なお姫さまであること。

では何でこの本を、というと、高校生の頃にこの先輩が「私のいびつな心を知りたかったら、TSUGUMIを読みなさい。」と僕に言ったからです。これ、結局どういう意味だったのか、その後確かめることも出来ないまま、彼女は故人になってしまったわけですが、とにもかくにも、先輩の訃報に触れたこの日だけは、これを読まないと、と通夜のために帰郷する常磐線の中で一気に読み切りました。(ちょうど手元になかったので、通夜までの時間ぎりぎりの状態で新宿で一時下車して、書店まで走って買ったのですが、この時ほど「どうして日本語の書籍がKindle Storeで買えないのかっ!」と思ったことはなかったのは、また別の(というかいつもの)話題…。)

吉本ばななのTSUGUMIの世界は、夏の景色が目の前に浮かんでくるような情景描写が印象的。そんな世界の中で、傍若無人に振る舞うつぐみは、気持ちというか内なる衝動に正直に生き、突拍子もない言動を繰り返すのですが、物語の終わりで死を受け入れていきます。ひいき目に見なくても文字通りの美人だった先輩が、どうしてもつぐみに重なってしまって、僕は結局、つぐみの心は理解出来ないままに、涙を流さずにはいられませんでした。

だれからも愛される気持ちの良い性格で、面倒見が良く、しっかり者で、正義感が強かった先輩。そこら辺は、心の底から真っ黒なつぐみとは違うと思うのですが、先輩からのいくつかの手紙を今になって読み返してみたり、電話で話したことを思い返してみると、きっと心は少し弱かったのかな、と思います。現状を何度も何度も確かめながら、これでいいのか、これから先はどうなのか、常に模索しながらの生き方だったのかもしれない、と今になって思いました。多くの人から支えられながらも、最後は心から身へ崩れて落ちてしまったのかもしれません。

それにしても、こうやって友人が突然この世を去るなんてことは今までなかったものですから、いくら心を過去に回帰させてみても、それは郷愁に浸ることが出来るだけで、やはり心の動揺は収まりません。この先輩には、4年半前に自分の結婚式に来ていただいてからそれ以来、一度も会えていなかったことが何よりも心残りです。でも、大切な人がこの世を去ることは、これからも、きっと繰り返されていくのでしょうから、僕はこれを時間をかけてでも受け入れていかなければならないのでしょう。

そんな未来のことはさておき、「会いたいと思った人には、いますぐにでも会っておこう」と強く思った、2010年の春でした。


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